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水面に滴が落ちる。 穏やかな水面には水冠があらわれ、その後しばらく波紋が続く。
一連の水面の変化をじっと見ていると、ふと、はじめの一滴の存在が気になってくる。はたして、あの滴は水面の中に溶け込んで、その後どこに行ったのだろうか。
滴にその後の世界があるとするならば、それはこんな空間なのかもしれません。どこまでも潔く、無駄のない世界に一滴の水の塊は、溶け込んでいくのでしょう。
そんなふうにして、この空間を味わっていただきたい。この空間には一分の隙もない緊張感と、おおらかな水面の内側にいるような安心感が同居している。そのような印象が私の感想です。
建物内部をしばらく徘徊させていただきましたが、しっくりくるのは屋上のプールを正面に見て、そこからじっくりと一滴の水のゆくえを想像しながら、下階へ降りていき、底へ沈んでいくまでのイメージです。
屋上は周囲を石で敷き詰められた地面にガラスの壁が立ち上がり、その内側にプールが設えてあります。写真では伝わりにくいですが、肉眼では相模湾の海と山の斜面、そして前方には江ノ島が視界に入ります。一通り外部環境を楽しんだらプールの水盤のきらめきに興味が湧いてきます。
この水面に滴が落ちたような気持ちで下階へ下りると、そこには誰にも邪魔されることがない水面内部のようなリビングが待っていました。青い海と空の景色と竹林の景色、ガラスの壁面はその両面の景色を切り取り、白で統一されたインテリアが一部の隙もなく配置されています。
なにも考えることなく、すっと自分に集中できる空間に身を置くと、自身のクリエイティブな感覚が研ぎ澄まされていきます。
このゾーンに入ったような感覚に自分自身が気づくと、連続する階段室や浴室、寝室までの空間へ進んでいく動線が心地よく感じます。
さらにその下、1階はまさに水面の底にたどり着いたような感覚を覚えることでしょう。階段室を下りる動作は水深の深い場所に沈み込んでいくような感覚です。ゆっくりと底にたとどり着くと、1階部分は扉と一体となった壁面で構成された廊下を南側に配し、3つの個室が並びます。各室の内部は北側に窓を限定しており、静寂の空間となっています。
こうした空間体験を一通り楽しんだところで玄関から外へ出ると、正面には江ノ電が通過する線路。やはりここは一般的な世界とは一線を画した特別な場所だったのだなと実感することでしょう。
白い雲が映える青い空や夕焼けの赤い空、日々刻々と変化する空の表情を内側から楽しめるという贅沢な時間を、ご自身の感覚を最大限に開放した状態でお過ごしください。 |